GALLERY

MOVIE

INTERVIEW

『ロミオとジュリエット』閉幕!
高杉真宙「生きよう」と思って演じた

高杉真宙主演、藤野涼子ヒロインで贈るウィリアム・シェイクスピアの代表作『ロミオとジュリエット』が、9月13日(水)より東京・有楽町よみうりホールで開幕した後、大阪、富山、愛知、福岡公演を経て、10月29日(日)仙台・電力ホールにて閉幕。今の率直な気持ちを、主演の高杉真宙に聞いた。

――ロミオ役として一番印象に残っている場面は?ロミオ役とはどう向き合ってきたか?

高杉
ジュリエットとのシーンはどの場面も印象に残っています。バルコニーでの幸せの絶頂のシーンや別れの絶望のシーンなど詰め込まれています。稽古・本番を重ねていって2人のシーンはいろいろな感情や解釈がでてきました。
1日1日、1公演1公演、物語の結末はかわらないけれども、どうやったら、ロミオが生き残れるかなと思っていました。ロミオがどうしたら生きていられるのかなと考えていました。
毎回、今回は「生きよう」と思って演じていました。必死にロミオ役に向き合ってきました。
公演の始まりの朝は必ず尊晶さん、藤野さんと3人で何気ない話をしたり、いろいろとすり合わせをしたりしていました。毎回、この時間を過ごすことで公演が始まるスイッチが入り、大切な時間を過ごせました。

――初のシェイクスピア作品を演じたことを振り返って

高杉
シェイクスピア劇は大変なんだなと思いました。いろいろな人が演じているから、台詞が長いからではなく、その台詞が演じていて自分に馴染んでいるのか、観客に伝えられているのか、演じている自分にはわからないので、そこが一番大変でした。共演者や演出家によって変わると思いますが、感情を表に出して会話をするのではなくて、言葉に重きをおいてのちに感情を追いつかせるというのが今回は大変でした。感情が先立つものというイメージが僕にはあったので、今回初めてこのように演技を組み立てていくことを知ることができたことは大きかったですし、学べてよかったです。

――演出の井上尊晶さん、ジュリエット役の藤野涼子さんについて

高杉
演出の尊晶さんはすごく愛と男気がある方です。毎公演観劇されて、演技の細かいところまでチェックしていただいています。それに良かったところは良かったと言ってくださいます。何十回と重ねても飽きることなく観てくださっているんだと思うと本番中はずっと安心感がありました。
ジュリエットは心の底から藤野さんで良かったと思っていますし、似合っていると思っています。稽古場から本番までずっと話し合って進めてきました。頼りになるジュリエットです。
藤野さんだけでなく、今回のキャストの皆さん、スタッフの皆さんに心から出会えてよかったと思っています。感謝しています。

撮影:岡 千里

ロミオ役 高杉真宙 × ジュリエット役 藤野涼子
生の人間が恋に落ち、笑って、泣いて、怒り闘う様を観てほしい

――イメージビジュアルを撮影し、いよいよ『ロミオとジュリエット』が始動します。今のお気持ちは?

高杉
藤野さんと初めてお会いして、これから始まるな!と。稽古前にいろいろなお話ができて嬉しかったです。イメージされた衣裳を着て、(演出の尊晶さんやカメラマンに)こういう感情でやってほしいと言われた時の藤野さんの表情がとても素敵で、お芝居をご一緒できることが楽しみです。
藤野
これまで男女2人でイメージビジュアルを撮った経験がなかったので、始まる前はどんな感じになるんだろう?と緊張していました。でも撮影を進めるうちに、俳優同士の気持ちの繋がりができて、稽古でどのように私たち二人がロミオとジュリエットになれるのか、楽しみになりました。

――お互いにどんな印象をお持ちですか。

高杉
藤野さんはとてもお話ししやすかったです。きっと楽しく明るく、稽古と本番の時期を過ごせると思いました。
藤野
高杉さんのドラマや映画は以前から拝見しているので、最初は近寄り難い大先輩が目の前に!と緊張しました。でも実際、3歳違いで、頼れるお兄さんという雰囲気。高杉さんが気持ちをほぐしてくださって、不安がなくなり、お稽古が楽しみになりました。
高杉
よかった〜(笑)。

――シェイクスピアとの関わりについて、出演作、また舞台や映画で観た作品について教えてください。

高杉
僕は今回が初シェイクスピア。初めてが『ロミオとジュリエット』であることが嬉しいです。舞台では別のシェイクスピアの作品を観たことがありますが、かなりアレンジが効いた演出でした。長く愛されてきた作品が時代によって変化するのは当たり前ですし、作り手や読み手によって作品は変わるもの。その舞台は明るく笑いどころが結構あり、エンターテインメント性の高いものでした。
藤野
私は一昨年、『ジュリアス・シーザー』にポーシャ役で出演させていただきました。高校生の時に初めて『ロミオとジュリエット』を読んだ時は台詞回しが難しく、壁を感じました。ところが『ジュリアス・シーザー』の稽古で台本を読み進めるに従って、シェイクスピアって難しいことを伝えているようでテーマがわかりやすいんだなとびっくりしました。特に、シェイクスピアの言葉遊びが好きです。野田秀樹さんが演出・潤色された『真夏の夜の夢』を観たら、野田さんによる日本語の言葉遊びが面白くて、それからシェイクスピアの戯曲を読むことにハマりました。

――『ロミオとジュリエット』は家同士の対立や若者たちの疾走する恋、仲間との友情、大人と若者の価値観の違いなど様々なテーマが含まれています。テーマ性で気になるところはありますか。

高杉
戯曲を読んで感じたのは、運命に抗うということ。抗い闘った結果、突き通せなかった、不条理の物語というイメージが強いです。
藤野
若者たちの考えや行動を、大人たちは理解できているようで理解していないなと思いました。若者たちがルールを変えてほしいと言う、その根本の意味を大人たちはわかっていない。一方、若者も大人の考えやルール、大人の社会を理解していない。大人と若者で区切るのは良くないことですが、シェイクスピアの時代でも現在も同様に、世代間の対立は生まれてしまうんだなと思いました。

――ロミオとジュリエットの役について。ご自身と重なるところ、あるいはこんな自分が活かせるかもと思うところはありますか。

高杉
今の時点でロミオのイメージは明るくて陽気、もしくはロマンチストで詩的。いろんな方向性がある中で選択をしていくことになると思います。藤野さんと稽古して、こんなロミオじゃないって思うかもしれないし、やってみると徐々に変わったりするから、まだわからないですね。
藤野
私もまだジュリエット像は出来上がっていないのですが、重なる部分としては一途さでしょうか。ジュリエットほどではないけれども、恋をすると一途に思う気持ちが強いです。というのは、小学生の頃、6年間ある男の子のことがずーっと好きで。同窓会でみんなに会うと、いまだに「あの子が好きだったよね」と言われます(笑)。クラスのみんなが気づくほど、表に出ていたみたいです。

――演出の井上尊晶さんはどんな印象ですか。

高杉
僕は以前にお話をさせていただいて、ありのままでお芝居へと送り出してくださる印象があります。また稽古で悩む時間があると思います。だからたくさん迷って、わからなくなることもあるはず。その点、井上さんはたくさん一緒に悩んでくださるんじゃないかなと思います。ついていきたいなと思わせてくれる、とてもありがたい存在です。
藤野
私は今日初めてお会いして、お話ししました。私の中で、演出家の方は先生としてちょっと怖いイメージがあったので、今日も心臓がドキドキでした。でも会った瞬間に柔らかく、話しかけやすい雰囲気を作ってくださって。その上、「自分の思うまま、自由にやっていいよ」と仰って、私が、悩みや小さな想いを一つずつ全部吐き出すことで、一緒に考えてくださる方だと思いました。

――この作品は恋に落ち、命を落とすまでがわずか5日間と、猛スピードで物事が動きます。その辺りはどう思いますか。

高杉
悲劇だけど、二人にとっては一つの幸せの形だったのかなと思います。
藤野
それほどの二人の熱量、一途な想い。特にジュリエットにとっては初恋ですから二人が走り出したのかなと思います。今の時代にはなかなかない濃縮された恋愛。観客の皆さんはこの熱を感じて、恋に限らず何か新しいことに挑戦したくなる、走り出すきっかけになるかもしれませんね。コロナ禍の影響で人との関わりが薄れた今、この作品が人と人を結ぶ再スタートになるといいなと思います。

――映像出演も多いお二人、演劇の醍醐味、面白さや難しさを教えてください。

高杉
何度も回数を重ねられること。それが一番楽しいです。もちろん大変だと思う時もあるけれども、繰り返しやってもまだ見つかるか!という、発見の瞬間の楽しさが忘れられなくて。もっともっと見つかるって思いながら、いつも演じています。
藤野
すごくわかります。稽古期間が充分あることは演劇ならでは。ドラマや映画では自分で作ってきたものを見せて、数分で直さなければいけなかったりもします。舞台はその点、稽古期間に、自分はこう思い、ここがまだわからないという状態でも、他の人と意見を交わし、共有しながら役を作っていくことができる。それは舞台の醍醐味です。

――『ロミオとジュリエット』はシェイクスピアの中でも、あらすじがわかりやすく、普段、演劇を観ない方でも観に来やすい作品だと思います。観客目線での演劇の面白さについて、教えていただけますか。

高杉
人間が目の前で、泣いたり怒ったり喜んだり、歌ったり踊ったりするのを見る。そんな機会は滅多にないので、率直に面白いなと思います。あと、ストーリーや熱、人と人がぶつかり合う姿も新鮮です。僕が個人的に一番舞台で好きなのは、始まる前の客席が真っ暗になる瞬間。その高揚感、これから始まる!という、あの息が止まる瞬間。それを含めて、舞台が大好きです。『ロミオとジュリエット』でも、そんな高揚感と共に味わっていただきたいです。
藤野
私も目の前で、生でお芝居をしていること自体が面白いと思います。映像ももちろん面白いし共感もしますが、舞台には思わぬハプニングもあるじゃないですか。それをマイナスに捉える方もいるかもしれないけど、観客として見ると、俳優さんも一人の人間だったんだな、と気づく。そういった生のライブ感を含めて、楽しめます。『ロミオとジュリエット』もライブ感たっぷりにお届けできるといいですね。
演出 井上尊晶
若さゆえの
						暴走、愛と死を生々しく

――イメージビジュアルの撮影が行われましたが、ご感想は?

高杉君とは出演が決まった時にお会いして、今、この作品を自分が演じる意味を話してくれ、頼もしく思いました。今日初めてジュリエット役の藤野さんとはお会いしお話して、キャスティングは間違ってなかったと思いました。とても表情豊かで幼い面も大人っぽさもあり、ジュリエットにぴったりという印象を持ちました。華奢だけど、芯が強い。二人が並ぶとすごく清潔感があって、良いロミオとジュリエットになると思いました。

――『ロミオとジュリエット』について、現時点での演出の構想を教えてください。

昨年、僕は『夏の夜の夢』を演出しました。調べるとシェイクスピアが『夏の夜の夢』を書いた時期は、イギリスではペスト(感染症)が蔓延しており、妖精の王と女王が仲直りをするのはペストの終焉の願いを込めてのことだと言われています。『ロミオとジュリエット』は『夏の夜の夢』の前に書かれた作品で、劇場がペストで封鎖された中でシェイクスピアは書いたと思われます。なぜ、この愛の物語をその時期に書いたのか、何か意味があるのか、長年シェイクスピアに携わっていてずっと不思議に思っていました。この演出のお話をいただいた時に、誰もいない渋谷のスクランブル交差点でロミオとジュリエットが禁を犯してでも会いたいと死を賭している若者のイメージが漠然と湧いたのです。
16世紀のイギリスよりもはるかにモノに溢れた今、色々なことが希薄になる中で、二人の物語がどのように観客に届くのかを考えています。

――渋谷のスクランブル交差点とおっしゃいましたが、現代に置き換えるということでしょうか。

そのつもりは全くありません。もちろん俳優は“今”の人ですが、物語を丸ごと現代に設定するつもりはないです。もっと広く普遍化された作品にしたい、狭く限定したくないという思いがあります。

――井上さんはこれまで蜷川幸雄さんのもとで、何度も『ロミオとジュリエット』に携わって来られました。その場合、過去作品のイメージがあるかと思います。それらを意識せずに演出なさるのか、それとも大事なところはオマージュとして捧げるのか、どちらでしょうか。

僕が演出助手で就いていた時の蜷川さんは、ロミオ役に、大沢たかおさん、藤原竜也さん、菅田将暉さんの3バージョンの演出をされました。それぞれ個性的で素敵でしたね。翻訳は全て、松岡和子さんで今回もお頼みしました。台詞を一言一句覚えていますし、全てが脳にこびりついていて、どうやって払拭しようかと思っています。
蜷川さんが生きている時に比べて、今はコロナ禍の影響が大きく、人と人の距離というものがより離れているように感じます。演出として、人間の“死”を目に見えるものとして表現するのか?シェイクスピアの時代のペストの拡大の時には、多分、死体が見える場所にゴロゴロ転がっているなど、人の死が目に見えるものとして存在したと思うんです。しかし僕らの時代の‘’死‘’は、今日の感染者数としてメディアの数字にしか現れてこない。“死”が見えない中で、どうやってそれに対峙していかなければならないのかなと。もっと生々しいものを僕なりに演出し、俳優たちが七転八倒しながら見えないものを見せて表現したいです。大変だけれども、それが課せられたハードルだと思っています。そのためには、キャストの皆さんがのびのびと走り回れる、ぶつかり合える環境を作りたいですね。ここでは何でもやっていい、そう思える稽古場にしたいです。

――今回は次世代の若い俳優たちが登場します。シェイクスピアを演出する際、蜷川さんの教えを伝えていくことに関してはどう思われますか。

蜷川さんは、ものすごく努力される方でしたから、常に高みを目指したその姿勢を伝えたいですね。また「今ここにいる自分を信用するな」「今の状況を否認し続けなきゃいけない」、そんな言葉や生き方も伝えられたらと思います。時代や状況を常に否定して、自分自身にも厳しくあれと。
今回の『ロミオとジュリエット』では、今の若者が世界に対して、どう向き合うのかが勝負になると思います。自分も含めて、いかに気持ちを昂らせてシェイクスピアの戯曲に向き合えるか。もしかしたらそれが継承に繋がるのかもしれませんね。

――『ロミオとジュリエット』に関して、井上さんが最も魅力を感じる点は?

僕の若い頃は、三島由紀夫や、石川啄木などの詩人達が夭逝することに憧れた世代です。若くして死ぬことの美学、その美しさ。究極の理想で、自分にはできないことだとわかっていても若い時には常に妄想していました。ロミオも、ジュリエットも人を好きになることで、我が道を突き進み、死に至る。周りを顧みずにこれだけ激しく突き進めるのは、うらやましいことです。シェイクスピアにしては珍しく、タイトルと中身が伴っている作品でもありますね。
若者たちが大勢出てきますが、皆、どこか鬱屈した若者であってほしいと思っています。世界に対してイライラして、それが不幸な結果を招くことにもなる。若者なら絶対にぶち破りたいものがあるでしょう。やりたいことをやっていいと背中を押せる、そんな作品にできたら。

――今回のキャスト、高杉さんと藤野さんに、どんなロミオとジュリエットを演じてほしいですか。

シェイクスピアが書いた言葉の難しさをわかった上で、身体全てを使って言葉を発してもらいたいです。日常言語ではない言葉を駆使することで、もっと違う自分になれるし、更にスケールアップできる。思いっ切り大胆に挑んでほしいと思っています。

『ロミオとジュリエット』
ビジュアル撮影レポート

高杉真宙

真っ白の衣裳姿が美しい高杉。すらりとしたフォルムで袖にはシンプルなフリルが施され、もって生まれた王子様らしさが一層際立つといえるだろう。
「自然に動いていいですよ」とカメラマンが言うと、正面からカメラを見る、うつむく、上を見るなど、自ら視線のバリエーションをつけていく。そのうちに「もっとクールに!」「足の重心を変えて」などのリクエストがあり、高杉はそれに応えるべくあれこれ動き、内なるものを出し続ける。くるりとした瞳が放つ力がこれまた強靭。あの眼に見られたら誰もがノックアウトされてしまうに違いない。
デザイナーが「風を入れますか?」と弱めの風を送り、袖口のフリルがゆるやかに揺れた。そこで「フフフ」と微笑んだ高杉。風と高杉の相性の良さといったら!恋に走り、命を燃やす、まさしく理想のロミオが出現。高杉真宙のロミオは確実に、観る人を虜にするはずだ。

藤野涼子

楚々とした白いキャミソールワンピースを着た藤野。カメラマンが「目をつむって」「あどけない感じで」「遠くを見つめるように」「風を感じて」など次々と指示を出していく。その声に応えるように、藤野も自在に変化していく。ナチュラルでありながら強さが宿り、ジュリエットにピッタリだと思わせる。
デザイナーが「花を入れたら?」と数種類の花を持ってきた。「黄色とピンク、どっちがいい?」と藤野に聞くと、少し迷った上で「どちらも可愛いけど、きっと色が映えるのはこっち」と黄色の花を選んだ。想像力が豊かなのだろう、香りを嗅いだり、じっと見つめたりと、花一つで広がる世界が眩しく青春を感じさせる。そんな様子を見たカメラマンは「固めないで、自由に動いてもらったほうがいいね」。するとスカートをヒラリとさせる、小さくジャンプする、足を蹴る仕草など、自然な可愛らしさが溢れた。

高杉真宙&藤野涼子

メインビジュアルになる2ショットの撮影が始まった。この日、初対面だった高杉と藤野。「初めまして」の挨拶から始まり、最初は立ちポーズから。背中合わせでカメラを見る、向かい合って視線を交わすなど。合間には会話をし、お互いにコミュニケーションをとることを意識しているようだ。
デザイナーとカメラマンがポーズの見本を見せた。真っ直ぐに座った高杉の後ろから藤野が肩に手を掛ける、寄り添うなど。背中合わせから一連の動きで、だんだん距離を縮めていく。演出の井上尊晶が「世界でたった二人しかいない。世界中が敵になったイメージで」と声をかける。白をまとった二人が実に尊く、いつしかロミオとジュリエットにしか見えなくなってきた。こんなに初々しい二人が、恋のために命をかけて世界と闘わなければならない…世界はなんて残酷なのだろうか。
次に、絵画が運ばれてきた。ほとばしる情熱、躍動感たっぷりの抽象画で、“ヒビ”がさらに勢いを増幅させている。これは現代アーティストAKI山氏による作品で、ブラックライトを当てると全く違う色彩と世界観が浮かび上がる。ヒビの間から見える光は、悲劇であるはずの『ロミオとジュリエット』の光、希望を表すのではないか。そんな閃きから、今回イメージビジュアルとして登場することになったという。
動画ではこの絵画の前に立つ二人を撮影。なんともマジカルな雰囲気で、抽象芸術との親和性も感じさせる。
撮影が終わる頃には、すっかり意気投合した様子の高杉と藤野。今までにない『ロミオとジュリエット』になるのではないか、そんな期待に包まれた。

次世代を担う若手俳優と、個性豊かな実力派が揃う『ロミオとジュリエット』のキャスト陣。都内某所で行われたビジュアル撮影、第二弾の模様をお届けします!

矢部昌暉

ブラウン系の衣裳をまとって、にこやかに登場した矢部。アーティストとしても活躍している矢部は、シャッター音のたびに体の向きや顔の角度などを変え、雰囲気を掴むのが非常に上手いし、様になっている。カメラマンも「自由に動いていいよ」と、しばらく二人のセッションのような時間が続いた。
そのうち、デザイナーが「今はクールでカッコいい感じなので、もっと人生を謳歌しているイメージで」とリクエスト。矢部の表情が柔らかくなり、溌剌と動く。その次に演出の井上が「もっとイライラしていいよ。若者が世界に対して納得がいかない、そんな気持ちで」と告げた途端、矢部の瞳に凄みが生まれ、一気に危うい空気感に。「いいね!片手をポケットに入れてみて」とカメラマン。その流れで、真っ直ぐ立つ、横を向くなど全身のバリエーションを撮影。最後には天を仰ぐような仕草で、鮮やかな存在感を見せつけた。この幅広い表現力はベンヴォーリオに十分生かされるに違いない。

冨樫 真

黒のシンプルな半袖のシャツ姿ながら、その場の空気感を変えるほどの透明感をまとって登場した冨樫。カメラマンに「レンズの奥を見るように」と言われて、凛と見つめる視線が眩しい。シャッター音に合わせてゆるやかに動き、表情も変える。時には挑むように、また優しく微笑みが宿るなど、表現も自由自在。モニターを見ていたスタッフ陣から「ヴェローナの人にしか見えない」と羨望の眼差しが注がれた。イメージ動画の撮影では、照明が激しく回る中、背中を反らせて振り向くその顔の美しいこと!俳優ってすごい……と脱帽。
撮影が終わると、自身の表情の豊かさに「自分でもびっくりした」と冨樫。素に戻るとサバサバとした現代女性、彼女の魅力は舞台でも発揮されることだろう。

廣田高志

トレードマークである長いシルバーヘアを後ろで一つに結び、颯爽とスタジオ入り。「カッコいい!」と声が上がったくらい、カメラの前に立っただけで様になっている。文学座で活動する廣田は、シェイクスピアシリーズでもお馴染みの顔。正面、身体を左右に振るなど一通り撮ったところで、デザイナーが「髪をおろしたカットもほしい」とリクエスト。その場でヘアメイクスタッフが整えると、背中の中ほどまで伸びた美しいロングヘアが現れた。
カメラマンが「自由に動いて」と言うと、シャッターが切られるたびに、手を襟元に、肩にと思いのままに動く。さりげないようでその瞳の奥は深く、どのカットも絵になる俳優の凄まじい表現力だ。「実は明日、髪を切るんだよね」と廣田。「もったいない!」と周りのスタッフに言われて、うれしそうに笑う。本番ではどんなキャピュレットで魅せてくれるか楽しみだ。

新原泰佑

演出の井上は新原を「若いのに色気がある」と評した。22歳の彼は、シェイクスピア劇に初挑戦となる。
この日の衣裳はえんじ色のセットアップ。デザイナーから「哀しみを宿したような暗めの瞳で」と言われ、ダークな雰囲気から撮影スタート。遠くを見る、手を胸元に置く、足の重心を変えるなど、新原は自在にポーズを変えていく。カメラマンが「少し甘い表情で」と言うと、瞬時に笑みがこぼれ、可愛らしい感じが魅力的。
合間にモニターチェックをしに来た新原は、スタッフに褒められて笑う。無邪気な一面を覗かせたかと思うと、撮影に戻った途端にシリアスな表情になった。デザイナーから発せられる「意志を込めた目力を」「少し悲しげな感じに」「凛々しく」などのリクエストに次々と応じていく。その振り幅の広さに驚くとともに、これからが楽しみな逸材だと確信。エネルギー溢れるマキューシオとして、舞台で大暴れしてくれることだろう。

一谷真由美

襟付きの白のシャツ姿で、エレガントに登場した一谷。カメラの前に立つと「正面?」とカメラマンに自ら確認。まずは試し撮りと聞いて、微笑みながら自ら身体の向きを左右に振り、ポーズをとった。
試し撮りのカットをモニターで確認しながら「何か言ってもらった方がいいな。もっと笑って!とか(笑)」と一谷が気さくに話すと、デザイナーは「スッと立っていていただければ」と答えた。これまでシェイクスピアはもちろん、イプセンや三島由紀夫、数々の名作に取り組んできた一谷、その佇まいだけで十分絵になるのだ。手を組み、真っ直ぐにカメラを見る。カメラマンが「手を顔の近くに」など様々なリクエストをしながら、次々とシャッターを切った。すでにモンタギュー夫人であり、ロミオの母の面持ちだ。
最後のモニターチェックで「表情が素敵ですね」とカメラマン。周りのスタッフからは「きれい!」と感嘆の声が上がった。

松澤一之

飄々とした風情でスタジオに現れた松澤。試し撮りの後、「首元のスカーフを変えましょう」とデザイナー。スタイリストがあれこれ巻き方を変え、前に垂らす形に。そのまま撮影開始。腕組みを前で、後ろで、腰に手を置いたり、ポケットに手へ入れたり。独特のずっしりした味わいが素敵で、大きく動かずとも手のちょっとした動きで空気感を変えていく。モンタギュー、またロミオの父として舞台でどんな存在感を放つのか期待大だ。
イメージ動画の撮影ではカメラマンからの指示に、「目線はどうしたら?」と確認。カメラマンからの指示通りに動いていく。撮影中は寡黙な松澤だが、撮影前には演出の井上と作品について熱く語り合っていた。また、この日はWBCの試合の日だったため、撮影後に井上から「逆転しましたよ!」と聞いて二人で喜ぶというおちゃめな面も見せてくれた。

三浦獠太

カーキのシャツにサスペンダー付きのパンツ姿でカメラの前に登場した三浦。スタイルの良さと鍛えられた身体が際立つ。いかにも好青年といった面持ちの三浦に、デザイナーから「野生味を」とリクエストがあり、スタイリストが袖をまくって襟を立てるなど、ワイルドな雰囲気を加えた。三浦に「(ティボルトをイメージして)厳しめの表情で、甘い感じにならないように」と指示が出る。三浦はカメラの真正面に立ち、腕を組む、両手を腰に当てるなど、まっすぐな視線と共に正攻法で挑んでいく。カメラマンから「サスペンダーに右手の指をかけてみて」と言われて、「こんな感じですか?」とトライ。これは新しいティボルト像になりそうだな……と、見ているだけでワクワクする。後半、カメラマンが「自由に動いていいよ」と言うと、力強さを保ちつつ、左右に身体を振りながらポージング。最後にコメント動画を撮って「終了!」の声がかかった。三浦は「いやー、緊張した!」と、等身大の自分に戻ったよう。本作は三浦にとって初舞台。活躍を期待したい。

星田英利

今回の『ロミオとジュリエット』で、へえ!と感心した配役が、乳母役の星田。以前はほっしゃん。の名で芸人として活動をしていたが、近年は俳優としての活躍が目覚ましい。
ニコニコしながらカメラの前に立った星田に、周りのスタッフから「可愛らしい!」の声が上がった。メイクも衣裳もとりたてて乳母らしく作っているわけではないのに、母性ともとれる慈愛を感じさせるから不思議だ。ちょっと首を傾げると、また「可愛らしい!」の歓声が。一見自然に見えるが、星田は内面でしっかり考え、演じているにちがいない。というのは、星田が「この乳母は何歳くらいですか?」と質問、プロデューサーが「40歳ぐらいですかね」、そんなやりとりがあったからだ。デザイナーが「目だけ笑ってキリッとした感じでお願いします」とリクエストすると、星田はボソッと「笑うまではいかない」。その言い方がめちゃくちゃ味わい深いし、そこにいるだけで絵になる個性派。あっと言う間に撮影は終わり、星田はニコニコと帰っていった。この乳母にジュリエットは育てられるんだなぁ。俄然本番が楽しみになった。

石井愃一

黒のスタンドカラーのシャツ姿で、登場から神父らしさが漂う石井。東京ヴォードヴィルショーの劇団員として知られるが、蜷川幸雄の現代人劇場や櫻社に属していた実力派だ。
撮影では柔らかい表情からキリッとした表情まで、振り幅広く表現。胸の下で軽く手を組み、まっすぐにカメラを見たかと思えば、空を仰いだり、自然と笑顔がこぼれたり。カメラマンが「軽く手を握って、上に上げて」とリクエストすると、まるで信仰心が見えるような絵になり驚いた。スタッフがモニターを見ながら、これがいい、あれがいいと相談していると、自らチェックしに来て、「他の人が見て一番いいカットがいいんだよ」と石井。少し照れくさそうな素顔もチャーミング、この人柄ならロミオとジュリエットが信頼するのも納得だ。

佐伯大地

背が高く、スタイル抜群な二枚目、何より華がある。ブラウン系の衣裳をまといスタジオに現れた佐伯は、自然な立ち姿でも十分絵になるので、あえて大きな動きはつけない方向で撮影がスタートした。
「柔らかく微笑むように」「視線を遠くに」「クールにカッコよく」「重心を左右どちらかに傾けて」などカメラマンが次々と出す指示に、柔軟に応えていく。デザイナーからの「歩き出すみたいに、片足を前に出してみたら?」というリクエストでも、その姿がまた様になる。演出の井上から「緊張してる?」と聞かれて、「全く(していない)」と度胸も満点。その上、「世界を睨みつけていいから。世界に対して負けないで」と井上が言うと、途端に強靭な目力が宿ったことに驚いた。
パリスは『ロミオとジュリエット』の登場人物の中でスパイスにもなる役。果たして佐伯からどんなパリスが生まれるのか、心を躍らせながら開幕を待ちたい。

文(インタビュー・撮影レポート) 三浦真紀